English 英語学習 Blog

米国カリフォルニアを拠点にするALSが提供するブログです。英文ライティング(英文の書き方)、翻訳、英文校正、ビジネス英語、工業英語、論文英語等、英語学習者にためになる情報を掲載しています。
特許翻訳の特殊性
特許に関して発生する翻訳には、参考資料としての一般的な技術文書、特許庁から出願人宛に送られる指令書に対する応答書類を含め多種ありますが、特に考慮すべき点が多く、知識や経験、発注元との取り決めなどにより翻訳者によって仕事のやり方や翻訳結果が大きく異なるのは、出願明細書だと言われます。
 出願明細書には正確に技術内容を記載せねばなりませんが、単なる技術文書と違うのは、法律文書として、出願後の権利保護 ・ 行使を考慮し、なるべく権利範囲が広くなるよう、且つ拒絶を受けるような曖昧さを排さねばならないという点です。この際、出願先の国あるいは地域における特許法、法律としての条文化まではされていない各種慣例 ( プラクティス )、過去の判例などが問題となってきます。特許法自体は文書を手に入れて調べることは簡単ですが、実際の出願や訴訟に際しては、結局のところプラクティスや判例が問題となってくるので、やはり長年実務に携わって得られる知識に基づく翻訳をすることで出願人に対する経済的ロスが少なくなります。
 日英方向の出願明細書翻訳の場合、米国出願用が多いのですが、ここで特に米国用に関して記します。米国において、過去の判例というものは大きく影響してきます。米国法は成文法と判例法で成り立っていますが、他の特許との権利関係が問題となってくる場合、文章として成立している成文法以外に過去の判例が参照されます。翻訳に関わってくるような問題も過去の裁判で判例が出されており、これらを考慮して後に問題となりそうな用語は用いないようにすることが肝心なのですが、ここで一筋縄ではいかないのが、判例というものは、過去にある件に関する判例が出されており、ある特定の件がその過去の件に類似である場合でも裁判で同じ結果が出るとは限らないことです。ある問題点・議題に対して裁判官たちの判断が相反する考え方にまっぷたつに分かれるということもあるほどです。ほかの分野での裁判同様、個別の件による特殊性があるという背景のもと、判断する側の人間の考え方、哲学にばらつきがあるからです。その意味において、はっきりとした答えがないまま、業界の大きな動向としてある用語や記載の仕方が広く行われているというようなことがままあります。
 また、出願明細書には米国用に限らず請求項 ( クレーム ) という部分があるわけですが、日英方向の翻訳の場合、日本国内での出願をもとに外国出願をすることが多く、この場合、日本用の請求項の記載の仕方は日本の特許法にのっとっているので、外国出願用のクレームにするには、その国の特許法の規定に合わせねばなりません。この際、請求項の文言のうち、どこまでが先行技術でどこからが新たな発明の部分になるのか、という点についての扱いが国 ・ 地域によって違いがあり、これが請求項の翻訳を特許以外の技術文書の翻訳とは性質の異なるものにしています。単に書いてあるとおりに言葉を置き換えるだけの翻訳が発注元に求められているならそのような訳文を納品すればいいわけですが、完成された出願明細書として納品しようと思えば、どこからどこまでが従来技術なのかを判断するために今回の発明の該当する技術分野の中での位置づけを理解する必要がありますし、特にどの点 ( 競合他社の技術など ) が気になっているのか、という特許を取得しようとしている立場の人間にしか分からない事情を知る必要があるケースもあるでしょう。
 このように、特許明細書の翻訳の場合、業界において見解が分かれているような語や記載の仕方に対して、あるいは、請求項の記載の仕方についてなど、扱いを発注元と打ち合わせが必要な点が多くあります。これが一般の技術文書の翻訳と異なる点です。発注元が最初にこのような各種の 「 方針 」 を翻訳者に示すと、翻訳者の迷いや作業の無駄が減るかと思います。
| 翻訳 | 22:08 | - | - | ↑TOP
行政翻訳 ( bureaucratic translation ) は役所言葉の解読作業
私は過去3年9ヶ月の間、語学学校の日英翻訳本科クラスで行政分野の翻訳を学んできました。実際、クラスでは専門の行政以外にも、様々な分野の新聞 ・ 雑誌記事を翻訳しますが、行政翻訳が主眼となっています。今までに英訳した文書としては、国民生活白書 ・ 防衛白書 ・ 公務員白書 ・ 海上保安レポートが挙げられます。
 この分野の翻訳は、中央官庁や政府、地方自治体が発行した文書を扱い、実務上は行政機関をクライアントとする翻訳形態です。今現在、クラスで教わっている講師はネイティブで、実際に日本政府の要人や政治家、外務省職員を相手に、翻訳を軸としたコンサルティング業務に当たっている人です。授業の中で様々な英訳に関する興味深いエピソードを聞かせてくれますが、その中でも特に最近のものでは、2004年の秋に小泉首相が外遊した際、国連で行なった英語のスピーチの英訳をしたというのがあります。
 行政翻訳で特徴的なのは、行政機関特有の役所言葉が多用されることです。 「 〜等 」、「 検討する 」、「 〜のこととする 」といった表現はその典型です。いずれも、物事をはっきりさせずに、いわゆる“玉虫色”にぼかす表現です。また、同じ言葉を何度も繰り返し、無闇に文章を長くするのも特徴です。さらに、いくつもの文を読点でつないで、本来なら3 ・ 4文で表すべきところを1文にしてしまうようなこともあります。このサイトをご覧の皆さんなら、次の文をどう英訳するでしょうか?

 司法制度改革に伴う新たな法曹養成制度においては、法科大学院における教育が、司法試験及び司法修習生の修習との有機的な連携の下に、法曹としての実務に関する教育を担うものであることから、そのような実務に関する教育の実効性を確保するため、裁判官及び検察官に加えて、行政実務に関する最先端の専門的な知識 ・ 経験を有する一般職の国家公務員を法科大学院に実務家教員として継続的かつ安定的に派遣することを目的とした「法科大学院への裁判官および検察官その他の一般職の国家公務員の派遣に関する法律」が平成15年5月9日に公布され、法科大学院における学生の受入が始まる平成16年4月1日 ( 準備行為に係る規定については平成15年10月1日 ) から施行されることとなった。 ( 人事院編平成16年度版 『 公務員白書 』 より )

 因みに、私は次のように訳しました。

 In the new system for training legal professionals being introduced as part of justice system reform, law schools play a vital role in providing practical education about legal professions in close connection with the National Bar Examination and legal apprenticeship. Based on this recognition, in order to secure effective practical education, a law concerning dispatching judges, public prosecutors and regular national public employees to law schools was promulgated on May 9, 2003, and came into force on April 1, 2004, when 68 law schools started to admit students ( the stipulations concerning preparations for dispatching went into effect on October 1, 2003 ). The law is intended to continuously and steadily dispatch regular national public employees with cutting-edge specialized knowledge about and experience in administrative work, in addition to judges and public prosecutors, to law schools as instructors.

 いかがでしょうか?上記の引用箇所の日本語のなんと読みにくいこと。8行にわたる文を読点でつなぎ合わせ、驚くことに1文にしてしまっています。まさに行政文の特徴を絵に描いたような例文です。私の英訳では、原文を意味のかたまりごとに3つに分け、3文で表しました。
 行政翻訳の面白さ、というか滑稽さを綴った本として、『 政 ・ 官 ・ 財 ( おえらがた ) の日本語塾 』 ( 中公文庫 ) という本があります。著者はイアン ・ アーシー、Iain Arthyというカナダ人で、実際に役所文書の翻訳に携わっているフリー翻訳家です。皮肉なユーモアに溢れた抱腹絶倒の内容満載で、是非お勧めです。
| 翻訳 | 22:08 | - | - | ↑TOP
法律文書の翻訳過程について
日本語をそのまま英語に置き換えても的確な法律英語になることはほとんどない。その逆も真である。例えば,本契約において,開始日とは,頭記の日付をいう,という日本語の契約条項があった場合,この 「 本契約において 」 の部分を直訳しても法律英語にならないであろう。英語では, 「 本契約の目的上は 」 と考えるのである。具体的には,For purposes hereof, “Commencement Date” means the date stated at the top of this Agreement.と表現するのが法律英語である。ここにhereofとは,of this Agreementの省略形であり,本契約の目的のためにという意味になる。本契約 「 において 」 の部分を本契約 「 の目的のために 」と置き換えるのである。また,公文書の証明書等の末尾に通常 「 この謄本は,原本と相違ない 」 という文言が日本語で記載されているが,原本と一致している点を忠実に翻訳すればidentical to the originalとするべきである。だが英語では,Certified to be a “true and correct” copy of the document on file with the registrar of…と記載されているのが通常である。本書面は,原本の 「 真実かつ正確な 」 写しであるという意味である。原本の内容をそのまま謄写した書類のことを謄本というのであるから, 「 これは謄本 ( = 「 真実かつ正確な 」 写し ) である 」 という日本語と同じ意味になるのである。
 さらに,微妙な判断を要する場合として,例えば,会社の表明保証条項中に,会社が○○法に基づき適法に設立され、存続していること,という文言があった場合,これをそのままCompany is legally established, existing under the law of ○○.と表現することもできるが,Company is duly organized, validly existing and in good standing under the law of ○○.と記述している英文が多い。つまり,「 適法 」 を 「 しかるべく 」( duly ) に,「 設立され 」 は 「 組織 ( organize ) され 」 に置き換え,「 存続している 」 は 「 有効に存続している ( validly existing ) 」 とし,最後にin good standingという日本語にならないような文言を追加するとそれらしくなるのである。なお,日本法に 「 基づき 」 の部分に関してはunderという前置詞を使うのが便利である。on the basis of the law of Japanとはあまり言わない。
 また,日本語の契約書によくある表現として 「 会社が特に必要と認めた場合 」 というのがある。これは,Company may deem necessary or desirableと表現することができる。しかし,同じような趣旨のことを,「 会社の合理的見解によれば 」 ( in the Company’s reasonable opinion ) あるいは 「 会社がその裁量 ・ 意見により適切と考える場合 」 ( the Company in its absolute discretion and opinion deems appropriate ) などと表現することもできる。日本語でも英語でもこれらの用語の間に相当の意味の乖離がある ( 英語のnecessary とappropriate は類語=synonymだが,これらとreasonableとが類語であるとはされていない ) と思われがちだが,実際上の適用においてさほど差異があるとは思われない。英訳とは,こうでなくはいけないというものではないのである。
 以上、要するに,翻訳といっても原文の中に落とすことのできないキーワードがあり,このキーワードは正確に翻訳することが要求されているわけであるが,その他の部分はターゲットの言語に合致するように適切に作文しているわけで,翻訳文が原文の単語をすべて正確に反映しているわけではないことに注意しなければならない。逐語訳は正確であるが読めないので商品価値は全くないものとされている。他方,翻訳文が自然で流暢で優雅であればあるほどそれだけ原文から離れていると確信しても間違いではない。ある言葉が省略されていたり,原文にないことが書かれてあったりするのである。しかし,それでよいのである。但し,同じような意味のことが書かれていなくてはならないし,特に数字の間違いは翻訳とは関係ないので ( indisputable error ) あってはならない。翻訳会社が顧客に納品する場合は,通常,校閲者がその内容をチェックしている。
| 翻訳 | 22:07 | - | - | ↑TOP
医薬、医学翻訳
医薬、医学翻訳経験から得られた私なりの「発見」と翻訳に「求められるもの」
医薬、医学翻訳と言っても様々な分野に細分されるだろうが、私の場合、過去6年間、主に予防医学 ( 栄養療法 ) と言われる分野で英和翻訳を行うことで、英語圏特に米国からの書籍、カタログ、インターネットなどから情報収集をすることが出来た。

日本にも 「 医食同源 」 に代表される 「 東洋医学 」 に対し、「 科学万能主義 」と 批判される事も多い 「 西洋医学 」 が存在する。ただ、深く研究していくと、その両方の強みを上手く統合することで、ガンをはじめとする生活習慣病などとも充分闘えることを、翻訳を通じて知ることができた。

私が医薬、医療翻訳を本格的にする前は、単純で無知とも言えるステレオタイプな物の見方をしていた。つまり、「 西洋医学 」 は、薬やメスを使った、絆創膏的な対症療法によるもので、「 東洋医学 」 は、漢方など使って、根治を目指す。従って、前者は 「 副作用 」 が伴い、後者にはそれがない。

これはまるで妄信もいいところだが、私が英和医学翻訳を通じて知り得た予防医学という分野は、極めて 「 健康的な考え方 」 をしていたのだ。ライフスタイル、とりわけビタミン、ミネラル等、微量栄養素をバランス良く含む、野菜や果物が豊富な食生活と適度な運動、ストレスマネジメントによって、かなりの病気は予防可能ではある。しかし、例えば、ガンその他の難病 ( もしくは生活習慣病 ) に万一罹った場合、「 西洋医学 」 を退ける ( あたかも 「 祈祷療法 」 で直そうかの如く )、もしくはやみくもに依存するのではなく、その医薬、医療による効果、効能 ( もしくは弊害 ) をきちんと理解し、賢く 「 併用 」 して行く、と考える。「 白 」 か 「 黒 」、どちらかの二者択一ではない、ということだ。

これは、医薬、医学翻訳を通して得られた貴重な 「 発見 」 であった。日本語だけの文献、又はインターネットからの情報は決して充分とは言えない。翻訳をすることで、医薬、医療、そして予防医学の最新情報が学べ、英語を使わず日本語のみを母語とする多くの読み手へと伝えて行くことが可能だ。

今までの翻訳経験を通して、英和翻訳に求められるものを述べてみたい。それは、第一に、原文の用語、文意を正しく理解すること、第二に、それを 「 翻して 」 出来るだけ読みやすい、こなれた 「 訳文 」 とすること。理想を言えば、これが翻訳文であることが読み手には決してわからないような。これらは必須条件となろう。もし、第三に、(「 翻訳 」 者である私の欲を言えば ) 原文から読み取れる、筆者の ( これが翻訳者では、創作になってしまうので禁であるが!)「 思い 」、それは読者に伝えたいという切なる願いかもしれないし、新たな発見への驚きかもしれないが、そうした人間 ( ロボットが書いたものを機械翻訳が訳すかの如く、ただ英語が日本語に 「 無味乾燥に 」 置き換えられてはいない)の 「 思い 」 というものが伝わるような、そんな英和翻訳をこれからもしていきたい ( 和英翻訳も全く一緒である )。人間の健康、QOL ( 生活の質 )、本人だけでなく、本人に関わる多くの人々の人生そのものに大きく貢献出来る医薬、医学翻訳。急速に進歩する科学、そして益々広がる対象範囲と共に、今後も医薬、医学翻訳の存在意義と需要は計り知れない。
| 翻訳 | 19:16 | - | - | ↑TOP
精神医学の翻訳
トランスレーション・ブルー : 精神医学の翻訳

精神医学の翻訳では、新薬に関するものが多い。おそらく薬物治療がいまの精神医療の主流となっているためであろう。その際、「 三環系抗うつ薬 : イミプラミン 」のようなポピュラーな薬ならいいのだけれど、辞書はもちろん、ネット検索でもひっかからない新薬に出くわすことが少なくない。簡単にカタカナ表記できればいいけれど、新薬、特に商品名には“けったいな名前”が結構多いから厄介だ。そんな時の最終手段は、英語表記のままにしておくこと。ただし、あまり英語表記が多いと、何のための翻訳か、わからなくなってしまう。

「 心の病 」とは言っても、最近は分子レベルの解明も進んでいるので、翻訳の際は、神経学、大脳生理学、分子生物学、遺伝子学、薬物動態学などの知識を総動員しなければならない。もちろん通訳するわけでないから、学術用語を全部暗記する必要はないけれど、最低限の「仕組み」はわかっていないと、いい翻訳をするのは難しい。この場合の仕組みとは、脳内での神経伝達物質の働きであったり、遺伝子突然変異が発生する経緯だったりする。そうした仕組みをよく理解した上で、「 a 」ひとつ、「 the 」ひとつに注意しながら翻訳する。少なくとも自分はそう心がけている。冠詞一つで意味が大きく変わってしまうからだ。まあ、これはどの分野の翻訳にも言えると思うけれど。

一時期、日本の官庁でころころ名前を変えることが流行っていたようだけれど、精神医療でも似たような傾向がある。これまで慣れ親しんできた病名が、知らぬ間にポリティカリーコレクトなものに変わっていることが多い。特に自分のような海外在住組(「 在外日本人 」と呼ぶらしい )は、気を付けなくてはならない。典型的な例が、統合失調症 ( 旧精神分裂病、2002年に改称 )や認知症 ( 旧老人性痴呆、2004年に改称 ) などだ。この手のものは今後も増えるだろうから、常に自分の頭のデータベースをアップデートしておかなければならない。

自分は英和翻訳が専門なので ( もちろん和英もやるけれど )、翻訳対象は欧米の記事や医学論文が多い。その際、訳していて、少し心配になることがある。日本の精神障害患者が置かれている現状だ。特に「 自殺率 」を目にする場合がそうである。ご存じのように、うつ病などの精神障害と自殺の間には深い関係があり、世界の高自殺率国のなかで、旧ソ連・東側諸国を除くと日本はトップである。アメリカや英国の実に2倍だ。抗うつ薬等の新薬承認を効率化し( 承認までの期間は欧米の2〜3倍 )、病気に対する偏見を取り除く努力をすれば、もっと多くの日本人の命が助かるのではと考えるのは、短絡的過ぎるだろうか。ちなみに、世界で最もよく売れている100種類の薬品のうち、日本で未承認の薬は28種類に達する( 米国はゼロ )。未承認薬の中でも最も多いのが抗うつ薬などの中枢神経薬だ。

ところで精神障害でも他の疾患同様、様々な臨床試験が行なわれるわけであるが、その際に目を引くのが試験期間の長さだ。10年、20年、なかには三世代(!)にわたって行なわれた試験もあった。こういう論文を訳していると、頭が下がるというか、大変な分野なのだなあとつくづく思う。どうか日本の精神科、神経科の先生の方々、がんばってください。
| 翻訳 | 18:01 | - | - | ↑TOP
PROFILE
LINKS
CALENDAR
S M T W T F S
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930    
<< June 2009 >>
SELECTED ENTRIES
CATEGORIES
ARCHIVES